食はいのちをテーマに、茨城・千葉に安心・安全な食品をお届けする生協です。
常総生協の組合員向けに毎週発行される会報をご覧いただけます。
飯泉さんの原木しいたけ
飯泉さんの3年間の
放射能汚染との戦い
飯泉さんの原木しいたけ再開に向けて
2011年の原発事故後、私たちの暮らしや食卓は一変しました。「地場、被災地の生産者を支えたい。でも子どもには食べさせられない…」。生産現場も混乱しました。「国の基準はクリアしている。対策も施した。しかし、出荷していいものか…」。
3年5カ月が経とうとしている今、世の中のほとんどは原発事故、放射能汚染が「過去のこと」になりつつあります。
そんな中、今も放射能汚染と戦いながら懸命にがんばっている生産者がいます。原木しいたけ生産者「なかのきのこ園」の飯泉さん親子です。
飯泉さんの生産管理努力で現在15ベクレル前後に
震災・原発事故後、出荷量は激減。生産規模を4割削減してでも、「原木しいたけ」という食文化、地域産業の灯火を消さないため、懸命に努力を続けている生産者がいます。原木しいたけの生産者「なかのきのこ園」の飯泉さん親子です。現在は後継者の厚彦さんが再開に向け懸命にがんばっています。
出荷停止していた2年間、飯泉さんと常総生協で話し合った対策、再開に向けた提案についてご説明します。
上の表は、2011年の事故当初から最近までの飯泉さんの原木しいたけの放射能推移です(常総生協検査室調べ)。2011年の原発事故当時は、事故前の2010年の原木に植菌した為、しいたけそのものはほぼ「不検出」で推移。しかし、2011年の植菌用に準備してきた原木の多くがフォールアウトにより汚染。ここから飯泉さんと生協の放射能対策への挑戦が始まりました。
1年後の2012年3月、対策を施した原木にも関わらず、しいたけから放射能が検出されました。悔しさと無力感、東電への怒り。他方で組合員へ安全なものを届ける使命。現場生産者、生協職員の苦悩が続きました。
2011年以降実施してきた除染と防護策
①原木の洗浄
原木表面を、飯泉さん特注の高圧洗浄機(1台350万円)で洗浄し、しいたけへの移行を少しでも防ぐ体策をとりました。
②遠方産地の原木への切り替え
業者、生産者間での奪い合いの様相。価格も2倍以上に高騰しましたが可能な限り購入しました。
③保管用ハウスの建設
原木しいたけは植菌してから収穫まで1年間かかります。この間、風で飛んできた放射性物質が付着しない様に保管用ハウスを建設(H24で12棟建設)。
④その他にも
・地域の研究所や学者と協力してしいたけのセシウム吸着をいかにして防ぐか実験。
・セシウムを吸収しにくい種菌の栽培実験など。
他方で飯泉さんは、「このままでは原木しいたけ生産者は孤立し、どんどん廃業してしまう」と原木しいたけ生産者が再び繋がりあえるように「東日本原木しいたけ協議会」を立ち上げ。国や行政への要望をまとめ、大きな駆動力となりました。
林野庁からの原木使用基準が50Bq/kg以下となり、確保できる原木が極めて少ない状況です。汚染度の低い原木が手に入らず、震災前より約4割削減した規模で、以下の様な生産管理体制をとって生産を継続しました。
生産管理体制(なかのきのこ園)
①他人任せにせず、自分で山と木を指定
原木購入エリアを汚染度の低い産地に定めます。飯泉さん自らが山に入って線量を調査し、原木を指定することもあります。
(2013年春の植菌分の原木産地は茨城、栃木、岩手、秋田、山梨、長野、大分など)
②原木のロット管理
原木納品時、チェーンソーを改造したサンプル採取器で原木を粉々にし、検査機にかけます(使用基準は50Bq/kg以下)。原木はロット管理します。
③土壌粒子にさらされない環境
原木に植菌後は保管用ハウス(人工ホダ場)内で育成し、1年後に収穫します。
④情報の共有化(Wチェック)
自主検査も実施し、情報は生協と共有化します。不測の事態が発生した場合、すぐに連絡を取り合います。
毎週の検査体制。飯泉さんのお弟子さんのしいたけも紹介。
東電原発事故による放射能汚染のために、莫大な時間、費用が失われたばかりか、何よりもかけがえの無い大地、海、そして里山が汚染されました。
事故当初、「地産地消は終わった」と考えた事は記憶に新しいです。しかし、こうした対策を受けて、再び飯泉さんの原木しいたけづくりを支えたい、里山再生にも携わりたいと思います。
他方で、「支えたい、でもやっぱりごめんなさい」という判断も当然理解できます。
そういった組合員の声も察して、飯泉さんからは、「もしよかったら、うちで研修していて、現在は大分で原木しいたけづくりを継いでいる生産者を紹介しますよ」と、5年間、飯泉さんのもとで原木しいたけづくりと里山の保全を学んだ江藤さんをご紹介頂きました。企画再開時は、江藤さんの原木しいたけも紹介します(江藤さんの紹介は下記コラム参照)。
また、再開に当たっての検査体制は以下の体制で臨みます。
原木しいたけの出荷・検査体制
①毎週検査を実施します。
(検査条件)
・使用検査機器:ゲルマニウム半導体検出器(右画像)。
・7200秒の検査で5Bq/kg以下の検査精度。
②「商品情報」に速報として掲載します。
※現在、飯泉さんの原木しいたけは15Bq/kg前後の実測値です(7月31日段階)。1袋換算(100g入)1.5Bq/g前後です。
※但し、自然のものゆえ個体差も当然あることから、これ以上に検出されることも想定されます。そのために、飯泉さん、生協でのWチェック体制をとります。
~なかのきのこ園の数々の放射能対策措置~
江藤廉平(えとうれんぺい)さんは大分県玖珠(くす)町にある原木しいたけ農家の4代目で今年29歳になります。
「家業を継ぐ前に、ほかの原木しいたけ産地で学びたい」と、大学時代にNHKで紹介されていたなかのきのこ園を訪ねるべく、単身つくばへ。
2008年から2013年まで飯泉さんからしいたけづくりを学びました。原木しいたけ育成の中で最も重要なホダ場(原木しいたけを育成するところ)の管理責任者をつとめました。
「椎茸を通じて大分県を活性化させたいんです。そのために、飯泉社長のところで勉強させてもらおうと思いました。
過疎化が進んで自分が生まれ育った町が消えてしまう…俺がなんとか出来たらいいな、と。口に出すと恥ずかしいけど、そう思ってます」と江藤さん。
食と暮らしの見直しを今後も進めましょう
東電原発事故による放射能汚染は、かけがえの無い本来の大地、海が失われました。子どもたちを始め、福島やこの地域に暮らす人々は、等しく被ばくさせられました。
他方で、本当に反省すべき点として、知らない間に日本に原発が54基も作られていたこと。もっと真剣に、原子力から遠ざかる暮らし、使い捨てをしない暮らし、安易にものを買わない暮らしをみんなで考え、行動していくべきでした。
後悔先に立たず。
九州の原木しいたけからも微量の放射能が検出されています。地球を1週して今回の福島由来か、1986年のチェルノブイリ原発事故由来かは定かではありませんが、広範囲、長期間に渡り残ると言う事実です。原木しいたけは私たちにこう語りかけます。「忘れてはダメだよ」。
悪いのは誰?
このようなことは、もう二度と繰り返してはいけません。もう二度と、子どもたちを被ばくさせてはいけません。
なぜ、東京電力が引き起こした原発事故のせいで、汚染された作物を出荷した生産者が悪者になってしまうのでしょうか?
なぜ、家族の健康のために産地や食品を一生懸命選ぶ消費者が、「風評被害」というレッテルを張られて悪者になってしまうのでしょうか?
福島事故の収束もまったく先が見えないなか、国と電力会社は平然と原発の再稼働を進めます。また同じことを繰り返すのでしょうか?
また、人々の分断を引き起こすつもりでしょうか?
ぜひ家族やご近所で話し合ってみてください。ぜひ、関心を持って話題にしてください。
そして、暮らしの見直しをじっくり進めましょう。
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中面の折り込みでは、なかのきのこ園後継の飯泉厚彦さんから、常総生協組合員へメッセージを寄せて頂きました。
こんな理由で加入しました!
他生協を利用していますが、常総生協の商品は生産者の名前がはっきりと分かる安心感があり、カタログにまで放射能の検査結果を載せている事で信頼できる生協なんだと言う事が伝わりました。
まだ子供が小さいので放射能の心配もありますが、地元の生産者を応援したい気持ちもあります。試食させて頂いた「鈴木牧場のヨーグルト」の味もすばらしかったので加入しました。(つくば市Hさん)
8月4回 原木椎茸、飯泉さんの3年間の放射能汚染との戦い 2014年8月4日発行(687kb)
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